いつも、イベントには過剰に入れ込んでしまいます。終わったら
ぐったりですが、どのイベントもそのぶん、思い出し笑いの宝庫


「鈴木亜紀」

2003年12月28日 PM8:00

開演時間に少し遅れて、青い部屋の階段を駆け下りたときは、乙女音楽
研究会、最初の音楽家、鈴木亜紀さんの時間はもう始まっていた。

どんな分野の世界にも「天才」と呼ばれる人々がいる。
僕は自分を「九州は小倉の天才児」と思ってたころもあるけれど、実際は
そうじゃないので、でも負けず嫌いなので、ホンモノに会うと結構クヤシイ
気持ちになる。その人が音楽のホンモノであったりすると特に。

まあ、彼らが「天才」たる所以は、遺伝子に起因していたり、環境であったり
幼いころの弛まぬ努力であったりして、どれも僕にはまったくないものだから
当たり前なのだが。(ただ、持論では、ポピュラー音楽をやるにあたっては、
必ずしも天才である必要はないと思っている。元々ポピュラー音楽は民族
音楽から派生したもので、その名の通り大衆のものなのだ。でなきゃやって
られないでしょう。)

さてそんな僕でも、今回の鈴木亜紀さんには、迷うことなく「天才」の
太鼓判を押すことができる。彼女のすごいところは、ピアノに関して
繊細なタッチでやさしさと力強さを自在に弾き分ける表現力と、
弾き語りとはとても思えない正確なリズム感・グルーブ感が同居
していて、さらにその上を歌声が自由に遊び回っていることだ。

青い部屋に入ってすぐ彼女の演奏を耳にしたときの衝撃は、
始めて矢野顕子の弾き語りを聴いたときと同質のものだった。
(もちろん同じ弾き語りでも音楽性は結構違うと思うが)。

そして何より歌の世界観が好きだ。ライブなのでとても全部の
歌詞を聴き取れてはいないけど、自然と伝わってくる暖かさが
あって、それが今も心に残っていてなんとも心地よいのだ。

特に夏祭りを歌った歌。「昼どき日本列島」で日に焼けたおばあちゃんを
見て、行ったこともない場所なのに懐かしく感じる、あの感じがした。
この感覚は一体何だろうと思っていたが、亜紀さんのホームページの
エッセイを読ませていただいて、少し謎が解けたような気がした。

今回のライブでは手拍子だけの曲もあり、ギターでの演奏もあり、
あっという間の出演時間だった。本当に、遅刻してしまったことを
強く強く後悔した。



「東京ポルチカ歌劇団」

鈴木亜紀さんの演奏が終わり、次は『ポルチカ歌劇団』の出演。その前に
座長であるリンリンジャズキッチン/川島イタルによる恒例のショウがある。
「乙女音楽研究会」の趣旨は、「乙女な音楽を奏でる演奏家を招待し、彼らの
乙女たる所以を一緒に解き明かしていきましょう」というものだ。

だから、演奏家の出演の前に、必ず彼らの詞や音楽を紹介するコーナーが
あり、それが当研究会の名物でもある。記念すべき第一回では、乙女音楽
読本と称して、国語の試験問題のようなものが出題され、その解答・解説を
しながら演奏家の詞の紹介につなげていくという形式だった。

今回はそれとは趣向を変えていて、リンリンジャズキッチン/リンリン扮する
乙霊(オトダマ)が、乙女心の分からないサラリーマン(川島イタル)に乙女心
理解のための指導を行う、という寸劇だった。

このコーナーのいいところは、ただ単におもしろおかしなだけでなく、
次に出演する演奏家を知らなくても、下手な解説を聞くよりずっと自然に
感情移入することができることだ。何より、これほど演奏家を大切にした
企画が、ほかにあるだろうか。

「東京ポルチカ歌劇団」は、一度青い部屋の別のイベントで見たことがあり、
ライブを見るのは今回が二度目。歌と踊りのリリアンヌさんとユリアンナさんを
フロントに据え、ギターとベースとドラムとアコーディオンの方々がサウンドを
支える6人編成。

女性二人が歌って踊るというのは、昔からよくある形だ。古くはピンクレディ
からウィンク、PUFFY、最近ではHALCALIなど。彼女らは大体において衣装は
もちろん身長、ヘアスタイル、顔なども似せられていることが多い。しまいには
双子でデビューして同じ衣装を着てたりなんかしていたユニットもあった。

反対に、男性デュオの場合は、一方が醤油顔ならもう一方はソース顔といった
具合に、できるだけ二人に違いを出そうとする傾向がある。確かに男の場合、
全く同じ姿形と衣装で並んでいると気持ち悪いだろう。

その点、ポルチカのお二人は、女性デュオでありながら、衣装が同じ以外
顔も身長も歌声もまるで違っている。でも、歌と踊りの息はぴったり。
それがなんともおもしろく、今までありそうでなかった形だと思う。

また、フロントのお二人が艶やかな分、バックの人々はモノトーンの衣装で
統一して、黒子に徹しているから、ステージはすごくすっきりして見える。
でも皆さんそれぞれキャラが立っていて、地味なわけでは全くないのだ。
6人の個性が、おそらく緻密な計算の上で絶妙なバランスを保っている。
これがポルチカ歌劇団の魅力だ。

曲は、どれもただただ楽しい。旅芸人一座が「私たちこんな国々を回って
きました」と話すのを聴いて、まだ見たことのない世界を想像して夢を
膨らませる子供の気持ちになれるような。特に大好きなのは、猛獣に
追われ「神か仏か金毘羅様のご利益か」と叫ぶ「私の猛獣狩り」。

元は笠置シヅ子の曲だろうか? 選曲のセンスが抜群だ。曲順といい、
曲と曲のつなぎの間といい、完璧なステージングには、本当に感動した。



「ナカマコフ」

さて最後の出演は「ナカマコフ」。 ナカマヨウコ(ボーカル、アコーディオン)
さん率いる、ギター、ウッドベース、ドラムのバンドだ。このバンドはリンリン
ジャズキッチン/ごうだじゅんこの大のお気に入りで、すごいすごいと聞いて
いたので、前からずっとライブに行きたいと思っていたのだが、やっと今回
その機会を得ることが出来た。

さて、実際に聴いてみると、噂に違わず、いや、噂以上のすばらしいバンド
だった。ルーツとなるものや、目指す方向性など、自分に近いものを感じた
せいかもしれない。 どこかで聴いたことのあるイントロだなと思ったら、
ジャズ畑の人々には定番の「a girl form ipanema」で、次の瞬間には7/8の
変拍子になるところとか、思わずにやりとしてしまう。

同じベーシストとしての視点で見ると、ベースの岩川さんは、ソロとか弾い
たらむちゃくちゃ上手なのだろうなあという印象を受けたが、このバンドでは
極力余計なものをそぎ落として、一音一音を大切にしているようだった。
ウッドベースでポップスをやるときの教科書になるようなプレイだ。

そういえば今日のベーシスト、鈴木亜紀さんのサポートのフジモトマミさん
とか、ポルチカの今村さんとか、みなさんバンドサウンドにおいてのベースの
必要十分条件を完璧に理解している方々だった。いつもついつい余計な
ことをしてしまう僕は、まだまだ子供だなと反省させられる。

ギターの安達さん。この人のサウンドは変幻自在だ。古館風に言わせれば
「音の怪人二十面相」といったところか。予測不能なので、次に何が起こる
のか楽しみになる。ナカマヨウコさん。この方は声もかわいいしMCもかわいい、
アコーディオンをもっている姿もかわいい。 しかし、彼女にはそれ以上に、
強い「ロック」を感じたのは気のせいだろうか。

一見すると「かわいらしさ」が先に立っているように見えるが、「ナカマコフ」
から伝わったのは、その奥にある魂の叫びのようなものだったと思う。
でもやっぱり、その叫びは最後には「かわいさ」のオブラートで包まれて、
僕の胸にやさしく、グサリと突き刺さったのだった。

以上、03'12/28の乙女音楽研究会について、出演者の皆さんのことを中心に
勝手ながら私見を述べさせていただいた。他にも、プチ小西教授のお言葉と
選曲とか、wato kitchenさんのスウプのお味とか、そのwato kitchenさんの
お誕生日をお祝いしたこととか、思い出し笑いはたくさんあるけれど、とても
言葉では全てを伝えきれない。

ここまで読んでいただいた皆さん。
次はご自分の目と耳と鼻と舌で、お確かめください。

(04'02/03 ジミー)